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連載コラム「初めての投資信託」
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- 第3回
- リスクと上手に付き合うコツ〜その1
「リスク」と聞くと「損すること」とイメージする方も多いと思いますが、投資の世界では「収益のブレ幅」をリスクといいます。つまり、どの位の収益を得られるかがわからない、その不確実さのことです。“大きく儲かる可能性もある代わりに、大きく損する可能性もあるもの”は、“収益はあまり期待できないけど大きく損することもないもの”よりリスクが大きい金融商品だということで、一般的には「預貯金⇒債券⇒株式」の順でリスクは大きくなります。また、同じ資産、たとえば同じ債券でも外国債券の方が為替の影響も受けることから、国内債券よりもリスクは大きくなります。
そして、一番気をつけたいのは、“リスクとリターンは相反するものだ”と言う事です。「一年で倍になります。損は絶対しませんよ!」という言葉にだまされて退職金を全部なくしてしまったなどの被害にあった方のニュースをよく耳にしますが、このようなうまい話の金融商品はありません。投資を始めるにあたって「自分に都合のいいばかりの商品はない!」ということをしっかりと覚えておいていただきたいと思います。
では、リスクと上手に付き合いながら、資産を形成していくにはどうしたらいいのでしょうか?ここでは、そのとっておきの方法をご紹介しましょう。
ここでちょっと考えてみてください。
1. これから日本の金利は上がりますか?下がりますか?
2. 日本の株価は上がりますか?下がりますか?
3. 日本の経済力は外国と比べて強くなりますか?弱くなりますか?
この3つの質問に答えられますか?答えられるという方でも、絶対にそうなると言い切る自信がありますか?
皆さんも私も、どんなに有名な経済学者だってドンぴしゃり当てることは不可能でしょう。いろいろな資料を基に予測することはできても、未来の予言はだれにもできません。
それならば、金融商品を選ぶときに「預貯金がいいに決まっている」「いや、これからは株式だよ」と断言はできないですよね。預貯金に全部お金を預けていて、金利はほとんど付かないのに日本の株式がどんどん上がっていったら利益を取り損ねてしまいますし、前回お話したように、インフレが進むと実質的なお金の価値が下がってしまいます。反対に、株式でお金を殖やして将来の学費にあてようと思っていたら、株式は下がって損してしまったのに預貯金の金利は上がり…こんなことならリスクの大きい株式ではなくて預貯金にしておくんだった!と後悔しても始まりません。
では、こういうことを避けるためにはどうしたらいいのでしょうか?その手段のひとつが「分散投資」です。
「分散投資」では「T.資産分散(資産を分けて預けること)」と「U.時間分散(一度に買わないで少しずつ時間をかけて買っていくこと)」を考える必要があります。
1.資産分散
- (1.)いろいろな資産に分けて預けましょう
- 一般的に、金利が高い状態が続くと株式は下がってきますし、金利が下がってくると債券の価格は上昇します(もちろん、相場はいろいろな要因が組み合わさって動きますので、必ずこうなるとは限りませんが)。ひとつの資産にだけ偏ると、皆さんの大切な財産がその資産の値動きだけに左右されてしまいます。しかし、預貯金・債券・株式など様々な資産に分けて投資しておけば、世の中の状況がどう変化しても対応できるようになります。
- (2.)国(通貨)を分散しましょう
- 私たちは日本に住んでいるので、普段「円」にしか目が行きませんが、これから先ずっと日本経済が強いとは限りません。円が弱くなった時に外貨を持っていると、円資産での目減りを防ぐ事ができます。これからは、世界の中での日本の位置づけにも目を向け、もっとグローバルに考える必要があります。
このように、分散投資をすれば、個人個人のあてにならない相場観など必要なくなります。それがリスクと上手に付き合う“とっておきの方法”なのです。
次回はもうひとつの分散「時間分散」についてお話しする予定です。お楽しみに!

投資信託の残高は2007年6月末現在、約82兆円と過去最高となっていますが、そのなかでも特に、毎月または隔月で分配金をもらえる投資信託が大人気です。金融商品取引業者や銀行に加えて、2005年10月から郵便局での販売が始まり、“今まで投資に縁のなかった方や高齢者が初めて買う投資信託として、分配金の出るものが安心するという理由で選ばれている”“今の預貯金と比べると利息(正しくは分配金)がたくさんもらえる”“販売する側にとっても「分配金」から入ると説明しやすいし、お客様も興味を持ってくれやすい”などの理由から人気投信になっているのだと思われます。
実際に分配金を手にして投資信託の良さをわかってもらえるのは嬉しいのですが、実はちょっと気がかりなこともあります。
ひとつ目は、分配金の出るタイプのほとんどは外国資産に投資しているため、ここ最近は円安の影響で分配金をたくさん出せています。しかし円高になった場合、分配金が少なくなったり出なくなったりする場合もあるのです。このことをきちんと理解して購入している方が、いったいどのくらいいるのかは疑問です。ふたつ目は、分配金はこれからもずっと今の水準でもらえると思っている方も多いということです。それにより、今後為替が円高にぶれたとき、「こんなはずではなかった」と戸惑われる方もいらっしゃるのではないかと気になっています。
また、実際には分配金が必要ではないのに、勧められるまま分配金のあるものを購入している方も多いようです。たとえば、年金生活をしている高齢者などで、年金の足しにしたい、お小遣いの足しになれば…と分配金を楽しみにしている場合はいいのですが、若い方の中には、資産形成のために投信を購入しているにもかかわらず、分配金が出ることによってなかなか元本自体が殖えず、毎月もらう分配金は知らないうちに使ってしまっている…という例も多いようです。
皆さんも投資信託を選ぶ場合は、自分の購入目的をはっきりとさせ、分配金は自分にとって本当に必要なのかどうか、よく考えてみてくださいね。
[コラム執筆者]
- 時川郁
- CFP。1963年熊本県生まれ。大妻女子大学短期大学部卒業。
日興證券にて11年間窓口営業に従事。1996年にファイナンシャルプランナーとして独立。マネー・ライフプランの個別相談から、セミナー・執筆など精力的に活動している。熊本日日新聞「家計のイロハ」、月刊家族時間「お金の学校」などを執筆。
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